ArchiCADでは壁・スラブ・屋根・シェルなどの構成要素に「複合構造」という属性を設定できます。つまり、一つの要素に予め設定した複数の層を割り当て、実施設計図などで躯体・外部仕上・内部仕上などを表現することができます。
壁などの各層を一括入力できるので、作業効率をアップさせることができますが、一つだけ注意が必要な点があります。複合構造の各層は途中で止めることはできません。
しかし、実際には同じ一枚の壁でも、仕上げが途中で変わったりするケースは多いです。「だったら、複合構造を使ったらいいの?それともやっぱり各層を別々に入力しないといけないの?」と迷う方もいると思います。なので、今回は複合構造の便利さと、仕上げが途中で変わることの両方に対応できる、便利な入力方法を紹介します。
最初に、一枚で入れる方法と、別々に入れる方法を比較してみましょう。
(比較表)
メリット | デメリット | |
一枚 | モデリングの効率が良い。 | 平面図:内部仕上げが変わるところで、壁を切る必要がある。 断面図:躯体と内部仕上げが同じ高さになる。 |
別々 | 仕上の変更や、高さの違いに柔軟に対応できる。 躯体と内部仕上をレイヤーで分けて作業できる。 |
作業時間が少し長くなる。 建具を配置するときに、建具と額縁を分けて入力する必要がある。 |
このように、それぞれにメリットとデメリットもあります。だったら、両方の良いところを取りましょう!
つまり、層が途中で変わらない部分は複合構造にして、変わる部分だけを分けます。例えば、RC打ち放しの外壁で、内断熱にプラスターボード仕上げの場合は、躯体と増し打ち+内断熱はずっと変わらないので一つの複合構造にし、内側のプラスターボード+下地をもう一つの複合構造にします。
もちろん平面図だけではなく、断面図方向でも同じようにしますと、躯体と内装を完全に切り離すことができます。
「でも、これは結構手間が掛かって、大変では?」と思う方もいると思います。最初はこう思われても仕方ないと思いますので、この方法のメリットを改めてリストアップしてみましょう。
- 正確なモデルが作れるので、直接図面が切り出せる
- 複合構造の便利さを活かせる
- 仕上げの変化に対応できる
- 途中で壁を切る必要がなくなる
- 躯体は確定していても、内装の案を複数作成できる
- 必要な場合は内装を非表示にして出力できる
- 協力会社に必要なデータを簡単に渡せる
- 躯体と内装を別ファイルで作成して、ホットリンクできる
- チームワークでの作業の場合、躯体と内装の入力作業を分けられる
今回はRC構造の例で紹介していますが、この方法はもちろん鉄骨や木造でも同じく有利です。実際の業務の中でも試してみてください!